全ては君の思うまま
今日も働いたーとソファになだれ込む。足が棒のようだと少し足をもんだ後、着替えて夕食の準備をする。

そのときスマホが鳴って、内容を確認すると鷹野からだった。そういえば、前に連絡先交換したことがあったなぁ、と思い出す。

『お疲れさまです。以前の営業所で取り扱っていたワインについて教えてほしいことがあります。今電話してもよろしいですか』

よろしくありません。
当たり前です。面倒。

しかし、急ぎの用だったら悪いし。

仕方なく電話をかける。数コール後に彼の声がした。

「寧々さん、お疲れ様です」

「お疲れ様です。どのワインのことでしょうか」

「こっちからかけ直しますよ」

「いいわよ、もうパスタ茹でちゃってるから早く用件をいって」

夕食のパスタをかき混ぜながら、早く電話終わってくれと願う。

「それって俺の分もありますか?」

「ないから」

「なーんだ。いつか食べたいなぁ、手料理。あ、ワインのことなんですけど」

以前の営業所のみで取り扱っていた、その地方の国産ワインの特徴を説明する。

説明しているだけなのに、相槌の仕方とか、いちいち居心地がいいことに気がつく。本当にこいつモテるだろうな。そんなことを思った。
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