極上旦那様ととろ甘契約結婚
針を抜きながら「無粋な事をして……」と謝罪するお医者さんにも、「ほんっと、ごめんなさい!」と私に手を合わせて謝るあゆみさんにも大丈夫だと言ったけれど、燻った熱は留まったままで。

起きられるようになったのなら、と気を利かせて用意してもらったお茶菓子にも手をつけられずに庭を見つめたまま、ついさっきまでぎこちなく過ごしていたのだ。




「抱き締めって……そんな……」

どうやら態勢を立て直した修吾さんとは違って、私はまだまだ戸惑って、顔も赤いまま。
そんな様子を見て笑みを深めた修吾さんは、そっと手を伸ばして大きな掌で私の髪を撫でた。

「俺のせいで悲しませたくないって思うのに、さっき俺の為に涙を流す成美を見て歓喜の気持ちが湧いたんだ。多分、これは独占欲なんだろうな。仄暗い気持ちの筈なのに嬉しくて心が震えたよ。それでようやく決心がついたよ。もう手放せないし、俺以外の男に視線を向ける事さえ許せないから。色々言い訳考えて逃げてたけど、今から全力で成美の心を奪いにいって俺のものにする」

髪を撫でていた掌が頬を包み、あごを持ち上げる。情熱を隠しもしない瞳に縫い止められる。

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