夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「金曜の定時後ね。ドレスコードを忘れずに。詳細はまた後でメールしておくよ」
「分かりました」
そう答えるのが精いっぱいだった。
周りからの羨望と嫉妬の眼差しが痛い。
一人では受け止めきれず、真苗に助けを求める。
「私……どうしよう」
「なんかお偉いさんから声かかったりして! 引き抜きとか!」
「う、うーん、それは喜んでいいのかな……?」
「給料上がるかもよ?」
「あ、それは嬉しい」
「でしょ?」
「後は……ほら、噂の社長を見られるかも」
「……確かに?」
クロスタイルの社長は倉内春臣という名前以外、謎に包まれている。
公の場に姿を見せるのは副社長の進海理(しんかいり)ばかりで、社長自身はほとんど表に出てこない。
雑誌を見てもニュースを見ても大した情報がなく、噂によると常にマスコミが動向に目を光らせているとのことだった。
「どんな人なのか教えてね」
「うん、見られたらね」
「見られるでしょ。創業記念パーティーなんだし、社長挨拶とかで」
「すごく怖そうな人だったりして」
「どうだろうね? でも優秀そう。たった五年で立ち上げた会社を大企業にするくらいだし」
「おーい、いつまで喋ってるんだ。仕事戻れー」
部長から声をかけられ、気付けば事務課の面々がミーティングルームを出ていたことに気付く。
「はしゃぐのもいいけど、ほどほどにするんだよ」
「はい」
神妙に答えたけれど、それは難しそうだった。
(仕事の一貫だって分かってるけど……やっぱり楽しみ)
ようやくゆるゆると喜びがこみ上げてきて、勝手に口元が緩んでしまう。
真苗に気付かれないようにしなければと思ったけれど、残念ながらミーティングルームを出た直後に気付かれてしまった。
「分かりました」
そう答えるのが精いっぱいだった。
周りからの羨望と嫉妬の眼差しが痛い。
一人では受け止めきれず、真苗に助けを求める。
「私……どうしよう」
「なんかお偉いさんから声かかったりして! 引き抜きとか!」
「う、うーん、それは喜んでいいのかな……?」
「給料上がるかもよ?」
「あ、それは嬉しい」
「でしょ?」
「後は……ほら、噂の社長を見られるかも」
「……確かに?」
クロスタイルの社長は倉内春臣という名前以外、謎に包まれている。
公の場に姿を見せるのは副社長の進海理(しんかいり)ばかりで、社長自身はほとんど表に出てこない。
雑誌を見てもニュースを見ても大した情報がなく、噂によると常にマスコミが動向に目を光らせているとのことだった。
「どんな人なのか教えてね」
「うん、見られたらね」
「見られるでしょ。創業記念パーティーなんだし、社長挨拶とかで」
「すごく怖そうな人だったりして」
「どうだろうね? でも優秀そう。たった五年で立ち上げた会社を大企業にするくらいだし」
「おーい、いつまで喋ってるんだ。仕事戻れー」
部長から声をかけられ、気付けば事務課の面々がミーティングルームを出ていたことに気付く。
「はしゃぐのもいいけど、ほどほどにするんだよ」
「はい」
神妙に答えたけれど、それは難しそうだった。
(仕事の一貫だって分かってるけど……やっぱり楽しみ)
ようやくゆるゆると喜びがこみ上げてきて、勝手に口元が緩んでしまう。
真苗に気付かれないようにしなければと思ったけれど、残念ながらミーティングルームを出た直後に気付かれてしまった。