夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
短編:ささやかな日常の一コマ
 とある休日のこと。
 今日は春臣さんも私も用事がないということで、のんびり家で過ごそうと決めていた。
 春臣さんは基本的に周りへの興味が薄い。下手をすれば自分に対しての興味も薄い。それなのに、私の趣味や好きなことには妙に興味を示してくる。
 それは妻として嬉しいのだけれど、たまに遠慮というものがなくなるのはどうかと思っている。

(なにがそんなに面白いんだろう……?)

 キッチンで、レタスをちぎりながら内心首を傾げる。
 今、春臣さんは私の背後に立ってじっとこちらを見ていた。視線が背中に突き刺さるようで、監視されているような気分になってしまう。

 ただでさえこのキッチンは落ち着かないのだ。あまりにも広すぎるせいで。
 油跳ねや汚れとは縁の遠そうな清潔感のある白いピカピカのキッチン台。やや高めの設計になっているのは、春臣さんの身長に合わせているからだろう。

 しかも、切れ味がよすぎる包丁から大小さまざまな大きさのお鍋まで、本当に多くのものが揃っている。ピーラーだけで三種類あった時は、いったいなんの皮を剥くときに使い分けるものなのかと五分ほど考え込んだものだった。
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