夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~

 心配してくれるのは本当に嬉しいしありがたいけれど、少し前の会話を振り返った私が望むのは「今すぐ離れてほしい」のひとつだけだった。
 でもそれを言えば春臣さんは嫌がるに違いない。
 契約結婚でしかない妻に対してもなにかと親切に接する程度には面倒見のいい人だから、本当の妻が相手となればこうなるのも無理はないのかもしれなかった。
 どうすればいいか、と少し考えていいことを思いつく。

「食べたいものがあるので、お使いをしてきてくれませんか?」

 我ながら天才だと思ってしまった。
 これならば合法的に春臣さんを自分から引き離すことができる。ついでにおかずの材料でも買ってきてもらえば、明日予定していた買い物にも行く必要がない。

(できれば材料がややこしそうで、買うのに時間がかかりそうなもの……)

 そうして買い物に行っている間に眠ってしまいでもすれば、こんなふうに私を抱き締めて離さないということにもならないだろう。
 そう考えていくつかの食材を頼む。近所の店にないものをすぐに思いつけるのが主婦というものである。たとえ一企業の社長で、生まれ育ちも立派な御曹司の妻だとしても、だ。
< 127 / 169 >

この作品をシェア

pagetop