夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~

「酔っていただけですし、きっと普段はまともな方だと思います。だってあの懇親会に招待されるような人ですから」
「あんな男を庇うな」
「でも」
「庇うな」

 言い聞かせるように二度も言われて口をつぐむ。
 代わりに、頑張って笑ってみせた。

「会社を潰したら社員の人が路頭に迷います。だから、だめです」
「…………」
「春臣さんの気持ちだけで充分すっきりしましたよ」

 咄嗟に庇ってしまったのは、春臣さんが本気で復讐しかねないからである。
 こんな些細なことで会社を買収された挙句潰されてはさすがにかわいそうが過ぎるだろう。

「そもそも買収なんて進さんに怒られます。そんなことしてる余裕、うちにはないぞって」
「……まあ、それもそうだな」

 クロスタイルはそういう企業ではない。今のところは。
 諭したことで春臣さんも多少頭が冷えたのか、いつもの冷静さを取り戻してくれる。
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