夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
一般的な男性だったら「早く終わってほしい」という気持ちから適当に言っている可能性もあった。けれど、春臣さんは違う。
正面から、背面から、遠くから、近くから。じっくりゆっくり見た上で毎回「似合う」と褒めてくれる。
嬉しいけれど、これでは決めきれなかった。
「やっぱりプリンセスラインに憧れます。マーメイドラインは……ちょっと着こなす自信が」
「身体の線が出て綺麗だった。自分で言う以上に似合っていると思うが、どうしてそう卑下するんだ?」
「春臣さんはもうちょっと似合わないとか、ほかのドレスの方がいいとか、言ってくれていいんですよ」
「全部似合っていると思うから、そう伝えているだけだ。思ってもいないことは言えないだろう」
「……うーん」
ドレス選びはそういう理由で難航した。
その三十分後、今度は立場を逆転させて同じやり取りが繰り返されることになる。
「グレーも似合うし、ホワイトも素敵です。本当に……!」
「さっきから“似合う”と“素敵”と“かっこいい”しか言っていないだろうが」
「だってほかに言うことがなくて」
春臣さんのタキシードは私が思っていた以上に素晴らしいものだった。
今更ながら、なんて見目の麗しい人を夫にしているのだろうと誇らしくなる。
正面から、背面から、遠くから、近くから。じっくりゆっくり見た上で毎回「似合う」と褒めてくれる。
嬉しいけれど、これでは決めきれなかった。
「やっぱりプリンセスラインに憧れます。マーメイドラインは……ちょっと着こなす自信が」
「身体の線が出て綺麗だった。自分で言う以上に似合っていると思うが、どうしてそう卑下するんだ?」
「春臣さんはもうちょっと似合わないとか、ほかのドレスの方がいいとか、言ってくれていいんですよ」
「全部似合っていると思うから、そう伝えているだけだ。思ってもいないことは言えないだろう」
「……うーん」
ドレス選びはそういう理由で難航した。
その三十分後、今度は立場を逆転させて同じやり取りが繰り返されることになる。
「グレーも似合うし、ホワイトも素敵です。本当に……!」
「さっきから“似合う”と“素敵”と“かっこいい”しか言っていないだろうが」
「だってほかに言うことがなくて」
春臣さんのタキシードは私が思っていた以上に素晴らしいものだった。
今更ながら、なんて見目の麗しい人を夫にしているのだろうと誇らしくなる。