夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
(かっこいい、かっこいい、かっこいい……)

 おそらく今、私はこれまで春臣さんと過ごした中で一番ときめいているに違いない。
 結婚してなお、こんなにも夫にときめきを感じられることが嬉しかった。

「俺の身体はひとつしかないんだ。全部は着られないぞ」
「お色直しをしましょう」
「披露宴をしないのに?」
「私が見たいんです……」
「……まあ、写真を撮るぐらいなら。その代わり、お前もほかにドレスを選べ。俺だけ着せ替え人形にされるのはたまらないからな」
「じゃあ、お互い二着ずつ……んんん、五着くらい着てほしいです」
「多くないか?」

 思っていた通り、私は春臣さんのタキシード選びにこれでもかというほど時間を使った。
 そうしている時間があまりにも満たされすぎていて、春臣さん本人から「別人のようだった」と指摘される始末である。

 それでも、私の思う最高の春臣さんは無事に決まった。
 もちろん私も、春臣さんの思う最高の私ということでドレスを決められたのだけれど。
 あんなにマーメイドラインは着こなせないと言ったのに、平気な顔で選択肢に入れた春臣さんは結構意地悪だと思った。
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