夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「そんなこと言われても、親会社とのかかわりなんて全然ないし。本当に仕事だけの関係だよ」
「そこをなんとか!」
「私になんとかできることじゃないからなぁ……」
「えー」

 未婚ならばともかく、先日結婚したばかりの友人まで唇を尖らせている。

(親会社って言っても雲の上の存在だよ。そんな人たちと知り合う機会なんて、奇跡でも起きない限りありえない)

 そう思った次の日に、奇跡が起きてしまった。

***

 出社してすぐ行われるミーティングで、部長からとんでもない爆弾が落とされる。

「というわけで、僕と誰かもう一人、クロスタイルの創業記念パーティーに参加できるから」

 ざわざわと先輩も後輩も同僚もみんな色めき立つ。
 正直、私もちょっとだけ期待した。
 とはいえ、何かの間違いなんじゃないかと思う気持ちもなくはない。
 そう思ったのは私だけではなかった。
 先輩が軽く手を挙げて発言する。

「部長、それって冗談じゃないですよね? だってうち、事務課ですよ?」
「冗談じゃないって。営業も企画もみんな部長プラス一人出られますよーって上からのお達し」

 また、わっと周りが盛り上がる。
 今、日本で最も有名なクロスタイルのパーティーともなれば、誰だってそうなるに決まっていた。

「で、普通に決めようと思ったら絶対決まらないだろうし、僕の方でクジを作ってきました」

 どん、と部長が小さい段ボール箱を長テーブルの上に置く。
 作ってきたという言葉通り、一応四方には『クジ』と書かれた紙が貼ってあり、申し訳程度の絵が描いてある。
 どうやら中には紙で作ったクジが入っているらしい。

「じゃ、みんな引いていって」
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