あの日の空にまた会えるまで。
とりあえず座りなよーと言って春ちゃんの椅子を引いてあげる真央。嬉しそうにその椅子に座る春ちゃんに真央が笑う。
「葵、この子めっちゃ可愛いんだけど」
やっぱり思った通りだ。
「そう言うと思った」
「春ね、おっけ、覚えた。私は真央!真央でいいよ」
「春ちゃん、真央はね、栄養士コースだよ」
「栄養士コース?じゃあ……楓だ!」
「あー、交換大学生?確かそんな名前だったような…」
名前くらい覚えてあげようよ、と心の中で言う。
「春とあの子、友だち?」
「うん!友だちだよ」
「へぇー。じゃあ今度ここに呼びなよ」
「いいの?」
「当たり前でしょ。ね、葵?」
「あ、うん!春ちゃんの友だちなんだし、真央のとこの交換大学生だしね」
「私も同じ班になったときに気まずくならなくていいし」
「なにその理由」
3人で他愛もない話で盛り上がる。
その時。
「そこの女子ー」
テーブルにどん!とコンビニの袋が置かれた。
「アイスいらね?」
「悠斗!」
「え?アイス?いるに決まってんじゃん!」
挨拶も交わすことなく真央は袋に手を伸ばしてアイスを求める。ガサゴソと物色して、真央は嬉しそうに一つのアイスを手に取り早速開封して食べ始める。
「気がきくわー。ありがとー」
「おうよ。葵は?」
「じゃあこれ!ありがとう」
私も有り難く袋からアイスを選び開封する。
夏のアイスは本当に有難い。
「ん。で、そこの君は誰?」
アイスが入った袋を差し出しながら、悠斗が春ちゃんに問いかける。
「い、伊藤春です!」
「春ね。俺は柿本悠斗。春は葵たちの新しい友だち?」
「悠斗んとこにも来てない?交換大学生だよ」
「あーー、なんかそんなんいたな。なるほどね。春はアイスどれにする?」
「わ、私も貰っていいんですか?」
「もちろん!貰っちゃいなよ」
真央が買ってきてるわけじゃないのに何故か真央が身を乗り出してくる。
「なんで立川がそれ言うんだよ。おかしくね?まぁ、本当にいいんだけどさ。ほら、どれにする?
「みんな、すごい仲良いんだねぇ。じゃあ、お言葉に甘えて」
「まぁ、私と葵は小学校から一緒だし、悠斗は中学からの仲だしね。腐れ縁って感じ」
「もはや腐ってるよな」
そう言って、自分で言った言葉なのに大きな口を開けて豪快に笑いだす。腐ってるって…本当そういうところ、昔からなにも変わってなくて逆に安心する。
「葵と悠斗に至っては元恋人だからね」
「えぇ!?」
「む、昔の話だよ」
「そうだぞ、立川。昔の話だっての」
「私は納得してないけどねー」
……真央はいつまでこの話を続けるつもりなのかな。
別に嫌なわけじゃないんだけど、いつまで続くのかと純粋な疑問が浮かんでくる。
「なんで別れたの?」
「なんかねー、友だち以上になれなかったとか意味わかんないこと言ってるんだけどねー」
「ちょっと真央!」
春ちゃんにまで語らなくていいでしょっと真央を引き止める。語り出すと止まらない真央だからいつまでもこの話が続くのはすごく困る。それは悠斗も同じだったようで、悠斗は少し嫌そうな顔をしていた。