あの日の空にまた会えるまで。
「どういうこと?」
「あんたは中学のときも、今だって奏先輩に対してひとっっつも文句言わないじゃん。少しくらい奏先輩に対して怒ってもいいと思うけど」
「それは…」
「本当に奏先輩には少しも怒りはないの?」
まるで心の内を覗かれるような、そんな真っ直ぐな視線を向けられて思わず目を逸らした。
それはきっと、自分がどう思ってるのかを知っていたからだ。
「……本当のことを言うと、ないわけじゃない」
中学の時は本当に心からの怒りを感じた。けれどそれ以上にショックや絶望、虚無感がそれを上回っていたから顔や口に出なかっただけなのだ。それに加えて、怒りや泣き言を表に出すのが躊躇われた。それは自分の悪あがきともいえる。言葉にすることで自分が奏先輩をどれだけ好きだったのかを知る気がした。私はこんなにも奏先輩が好きだったんだと自覚したくなかった。
文句を垂れ泣き言を言う、そんな醜い行為を曝け出したところで、あれほど好きだったあの人は私のことなど最初から何もなかったかのように、別の手を取って姿を消した。それが全てだった。
奏先輩が取った手こそが何よりの真実だった。
だからこそ……真実を知っていたからこそ、何も言うことができなかった。
「ないわけじゃないんだけどね……」
目を伏せて苦く笑う。
ーーーいつからこうなってしまったのだろう。
いつからなのか、自分の感情を上手く操ることができなくなった気がする。
喜怒哀楽というのだろうか。笑って、喜んで、楽しんで。そうやって人並みに過ごしてきたはずなのに、怒りや哀しみだけは、心の中に留めてしまうようになった。