擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
そんなことを彼に頼むのは気が引けるし、当番を無くしてしまったら誰がお茶を入れるか揉めるのではないだろうか。
気が利く女子や新入社員が頻繁にいれることになるかもしれない。それはとても負担で問題になると思うのだ。
「『お~いお茶当番誰だ~? 俺のお茶がないよ~』って男子社員に言われると、ムカッとしちゃうよね。私だって忙しいんだから、欲しかったら自分で入れてよって言いたくなる」
頬を膨らませるのは営業部のぽっちゃりした子で、名前は有田と言っていた。その後に続いて佐々木が興奮気味に話し始める。
「分かる! ほんと嫌だよね! 私も担当企業のサイトで問題発生して対処で手が離せないのに、会議だから十二人分お茶入れてって言われたときは、本気で涙出ちゃったもん。そのときは恵梨香が変わってくれたけど」
佐々木は当時を思い出したのか、恵梨香あの時はありがとうねって言いながら目を潤ませている。
「だからお願い、頼んでみてくれないかな」
「河村さんから言ってもらえれば、改善してくれるはずだもん」
彼女たちの気持ちは分かる。でも安易に返事をすることができない。
彼は掃除と同じようにお茶当番にも着目しているはずだ。それなのに廃止にならなかったのは、彼なりの判断の上でそうしなかったと思うのだ。
「えっと、でも……多分、ムリだと思う」
「え~、そんなこと言わずに、お願い!」