擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
机を拭いているだけなのに気品があるように見え、掃除会社の従業員に留まるのには、もったいないとさえ思えた。
「綺麗な手ですね。パーツモデルができそう」
つい話しかけてしまった。
「ええ、そうでございましょう? 毎日のケアは怠りませんの。女性らしい仕草も印象もすべて手が鍵ですわ。美しい手は男性の気を引きますから、きちんとお見せしなければなりませんの」
彼女は机を拭く手を留めて、とても誇らしげに語ってくれる。ゴム手袋をせずに作業しているのは、男性に対して美しい手を誇示するためのようだ。
「現に幾度かお声がけをいただきましたのよ。だから、あの方もきっとお目に留めてくださるわ。そして私に愛情を向けてくださいますのよ」
『お声がけ』とは、手を褒められたことで、『お会いするあの方』はお見合い相手のことなのかな? それとも恋人?
「手の美しさだけで愛情が得られるのですか?」
「ええ、もちろんですわ。きっと私とお会いになったら驚いて感動してくださいますわ。そして抱きしめて愛の言葉をささやいてくださいますの……これからお会いするのが楽しみですわ」
ちょっと妄想癖があるみたい?
最初に感じた通りに風変わりで、若いように思う。
亜里沙と同年くらいか。少し上の年齢。おそらく独身なのだ。