擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

「可愛いお嬢さんだって言ってたから、結果オーライだよ。それに俺は鼻が膨らんだ顔も好きなんだ」

 そんなふうに言われてしまえば、文句を言う気も失せてしまう。

「さ、約束の指輪を買いに行こうか」

「はい、素敵な指輪を選びましょう」

 彼が差し出す手を亜里沙はぎゅっと握る。

 リゾート地で初めて彼と手をつないで以来、何度もこうしているけれど、いつでも新鮮な気持ちになれる。

 最初は驚いてその後は楽しくて。そして嬉しくてたまに面白くてもあって、そして安心できる。

 彼の手のひらは亜里沙への親愛の象徴で、亜里沙の手のひらは彼への信愛の塊だ。いつまででもこうして手をつないでいたいと思える。

 だから彼が車を運転する間だけでも手が離れると、ちょっぴり寂しくなるのだ。以前に比べて贅沢になったのかもしれない。

「結構いろんなデザインがあるんだな」

「一生ものだから、シンプルな方が飽きないかも?」

 悩む亜里沙と彼のもとに、宝石店のスタッフは次々と見本を持ってくる。宝石店のカウンターには、様々なブランドものの指輪が所狭しと並べられた。

「香坂さま、こちらのデザインはいかがでしょう?」

 ダイヤモンドがたくさん使われた華やかな指輪を、「今とても流行っているんですよ」とにこやかに言って勧めてくれる。

「豪華ですね……」
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