擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
亜里沙の知っている結婚指輪と言えば、両親が身に着けているものだ。
飾り気のないシンプルなプラチナリングで、こんなふうに宝石が散りばめられているのは婚約指輪のようで……。
彼の意見を求めるように見つめると、亜里沙の好きなデザインで構わないと言う。
「豪華なのはお嫌いですか?」
「嫌いではないですけど、普段身に着けるのはもっとシンプルでいいと思うんです」
亜里沙が迷いつつもそう言うと、スタッフはにっこりと笑った。
「そうでございますか。香坂さまのご要望を叶える最適の商品がございます。少々お待ちくださいませ」
スタッフが席を立って倉庫らしき方へ引っ込んでいく。
もっと豪華な指輪を持ってくるのだろうか。そんなことを考えていると、背後から女性に呼びかけられた。
「香坂さん?」
彼と同時に振り返ると、そこには妙齢の美女がいた。
「やっぱり香坂雄大さんね! お久しぶりです~」
彼がスマートに立ち上がり、亜里沙に手を差し出すので、それに掴まりつつ隣に立った。
「相良さん。お久しぶりです。相変わらずの華やかさはお変わりなく、なによりです」
「香坂さんこそ、相変わらずのイケメンぶりで眩しいほどですよ」
相良はころころと笑い、亜里沙の方に視線を向けた。
「こちらは? 指輪をお選びになっていたみたいだけど、ひょっとして、まさか、お相手がお決まりになったんですか!?」