擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
リゾートホテル『リレリパージュ』にあるレストランは、ミシュランの三ツ星以上を獲得した店名が軒を連ねているそうで、今夜はそこで食事をしようということになった。
彼がフロントでなにやら話をしている間、亜里沙は初めてこのロビーに来た時のことを思い出していた。
ほんの一日前、珈琲をかけられてきたときもそうだったけれど、明かりの点った今は、天井から下がるオブジェが輝いていて、よりいっそう豪華に見える。
二年ほど前に流行った、豪華な船旅をする映画に出てくるダンスホールみたいに、煌びやかで美しい。
──こんなの、もう二度と見られないよね。
「待たせてごめん。行こうか」
そう言って微笑んだ彼は亜里沙の腰にそっと手を添える。
灯台でそうしたときよりも少し遠慮がちなのは、場所がリゾートホテルだからか。
──それに、こんなにセレブで素敵な人と一緒にいられるのも、今日でおしまい。
旅先で出会った人なのだから、当然なのだけれど……。
佐生上階にある和食レストランに入り、懐石料理をお酒とともに味わう。
彼は学生の頃に訪れた外国の話をしてくれて、亜里沙はまだ行ったこともない国の景色を頭に浮かべた。
「……自転車の旅はきついこともあったけど、たくさん貴重な経験が出来たんだ。知らない土地で見知らぬ人と出会って、助けられたり、俺も助けたりして。その経験が今の糧になってる」