擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 ──それなのに、いないとは……もっとしっかり捕まえておくべきだったか。

 住所も勤め先も連絡先も訊いていない。そして自分も何者であるか告げていない。

 後悔しても遅い。

 雄大とあのような状態になった後に、なにも告げずに去る女性は亜里沙がはじめてだ。

 雄大はカーテンを開けて外を見やった。海岸線の隅に亜里沙が宿泊している『小浜館』が小さく見える。

 メッセージもなにも残さずに消えたからには、おそらくもう宿にはいないだろう。

 ──まあ、いいか。彼女を探し出すのは容易いことだ。

 見つけたらしっかり捕まえて、今度こそ自分の思いの丈をぶつけることを決めた。



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