擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「私考えたんですけど。お互いの両親に会うのは、擬似結婚を乗り越えて、本当の夫婦になれたときにしませんか? 香坂さんにとっての私は、きっとすごく思い出補正があるというか……非日常的なマジックが解けて、ある日突然すぅっと冷めるかもしれませんし」
「俺の気持ちはずっと変わらない、自信がある。でも不安なら、亜里沙の納得する形にしよう」
「ありがとうございます」
強引に推し進めるだけではなく、亜里沙の意見も聞いて譲歩してくれる。彼は非の打ちどころがないかもしれない。
「これからの生活の中で、冷めるという言葉が浮かばないように頑張るよ」
「頑張るなんて……香坂さんは、そのままで十分です」
亜里沙の方こそ、嫌われないよう努力しなければならない。料理も掃除も完ぺきではない。
どちらかと言えば下手な方だ。それでも彼の感情は変わらないのだろうか。
突然始まる仮妻の生活に思いを馳せながら、運ばれてきたジェラートにスプーンを入れた。
「え、まさか、ここって」
レストランから出て、『帰ろう』と言って車を走らせて来たのは亜里沙の家ではなかった。
『降りて』と言われて車から出れば、そこには闇夜に浮かぶ荘厳なマンションが……。
「香坂さんの家、ですか?」
「そう。連城がどんなふうにチェックしてるか分からないから、こうした方が安全だと思うんだ。それに俺としては、はやくきみとの生活を始めたいし……」