擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「俺が亜里沙を妻にする理由は、いろいろあるんだ。性格のかわいらしさや、食の好き嫌いがないこと、一緒にいると楽しくて癒されること。そのほかに、相性も含まれてる」
「あいしょう……?」
亜里沙は心の中で五文字の言葉を繰り返した。
愛称、愛唱、哀傷……相性?
「夫婦の離婚原因には性格の不一致がダントツだけど、あれは表向きの情報で、一番大事なのは性の相性だと思う」
亜里沙の体の上に乗っている彼が身に着けている衣服がどんどん脱ぎ捨てられて、とうとう上半身の肌が露わになった。
無駄な贅肉のない引き締まった体はとても魅力的で、リゾート地での一夜が亜里沙の身によみがえってくる。
あのときの匂い、温度、触れ合う肌の心地よさ、すべてが。
「忘れられないと言ったのは、そこも含まれてるからこそなんだ」
「含まれているということは、つまり……あの、その、えっと」
頬を赤らめて、しどろもどろになる亜里沙に、彼はなんとも魅惑的な笑みを見せた。
「ひょっとして、わからない? それならきみにも分かるように、今からあの夜を再現するよ」
前髪を分けられて額に唇が降ってくる。リップ音を立てて離れた唇が、緩やかに弧を描いた。
「再現……できるんですか?」
「もちろん。再現する前に、俺からきみへの要望があるんだ」