こんなにも愛しているのに〜それから

終わってから

お義父さんの家へ出向いて
報告をする気力もなく
申し訳なかったが
電話で全て終わったとだけ
告げて
家に帰った。

子供が生まれる時にお義父さんが
建ててくれた家に。

いつもだったら
誰もいなくても寂しさなんて
感じないのに
今日は
暗い部屋へ帰って、
電気をつけて
思った。
息子の声も足音もないことが
こんなに寂しいことだったとは。

その日
息子は義両親が預かってくれていた。

ソファにぐったりと身体を預ける
則文の全身から疲れが滲み出ていた。
私もそう。
でも
頭の中は冴え渡っている。
私は彼女の姿に自分の姿を見た。
自分のことを女として
見てくれていない男を思い
自分勝手に思いを遂げ
そこに相手の気持ちが
寄り添ってくれないからと
勝手に腹をたて、
何も知らずに幸せそうに
彼に愛されている奥さんを
羨み妬む。。。

彼女は妊娠したと嘘をつき
私は妊娠している奥さんに
彼と愛し合っているかのように
嘘をついた。

彼女の嘘は毒のように則文を蝕み
私の嘘は毒となって彼の奥様を蝕み、
西澤くんとのお子さんを不幸なことにした。

私の罪は重い。

「ヨシ、本当にごめん。」

「則文もう終わらせよう。
今日で何もかも、終わった。

彼女ともこれで会うこともないし
彼女の会社の担当者も代えよう。」

則文は深いため息をついた。

「ヨシ、、、別れよう。
離婚しよう、僕たち。」

則文が声を絞り出すようにして言った。

「なぜ?彼女が可哀想になった?
彼女に想いが残っていたの?」

私の頭の中は、則文の私への別れの言葉が
そのまま彼女と一緒になりたいからと
いう答えしか、導き出せなかった。
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