こんなにも愛しているのに〜それから

則文の想い

「まさか!
それは絶対にない。」

私は則文の隣に座り
彼の顔を覗き込んだ。

則文は私から少し距離をとり
目を合わせることなく
話だした。

「僕は大学に入ってすぐ
サークルの先輩としてのヨシに会った。
新卒で働き出していたヨシは、
僕から見たら
大人で
輝くほどきれいだった。
ひと目で自分の気持ちを持っていかれた。

何とか
何とか
きっかけを無理矢理にでも作って、
ヨシに近づきたかった。」

そう。
新歓フェスの時に初めて則文を知った。
当時は
整った顔立ちの育ちが良さそうな子だなぁ
ぐらいの印象しかなかった。

私の同級生を通じて、
コンタクトを取ってきた則文に
拝み倒されるようにして
付き合い始めた。

年下だったけど
性格もよく
今まで私が付き合ってきた彼氏の中では
一番性格がまともで
私のことを一番に考えてくれて
愛してくれた。

そんな
則文と一緒の時間が
私の一番の安らぎの時だった。

「いつも眩しい存在だった。
頭が良くって、やることもスマートで
周りから
お前とは格が違うな、って言われても
平気だった。

本当に僕とは違う。
そのヨシの個性を僕は好きだった。
一生、ヨシを支える人生でいい、って
思っていたんだ。」

今まで
自分のターニングポイントに立った時
私は自分で道を選んで
則文に話していた。
相談するということをしたことが
なかったが
則文はいつも私の選択を認めてくれて
私が私らしくいられるように
護ってくれていた。

「同棲して
僕が就職して、
毎日が楽しかった。
きっと
苦しかったこともあったと思うけど
ヨシとの一つの小さな幸せがあったら
それで
僕は幸せだった。」

家事はできる人がする、
生活費はそれぞれ決まった額を
二人の共通の口座に入金する、、、
結婚式は自分たちがしたいようにするから
親を頼みとせずに二人でお金を貯めよう。

何も構えることなく
自分らしい日々を
則文に護られて過ごしていた。

いつも間にか忘れていた。
あの心地よい日々を。

「けど
ヨシが林田先輩に誘われて
転職した頃から
何かが噛み合わなくなっていった。

僕は林田先輩が苦手だ。
なのに、
平気で年上の先輩と同等に
張り合うヨシを、すごいなと思っていた。
毎日毎日疲れ切って帰ってくるヨシが
心配だったけど、
それでもやりがいがあるって、楽しいって、
言ってたから、僕はよかったと思っていたんだ。

段々と
ヨシの生活のリズムと僕の生活のリズムが
合わなくなって
夕飯も一緒に取ることも無くなってきて
二人で暮らしているのに
一人で暮らしているような
味気ない毎日に、なっていったよ。
そのうち、、、」

則文が言い澱んだように黙る。
私は
則文が何を言いたいのか
それがわかって、心が痛む。

「ヨシの気持ちが僕たちの生活の中から
消えていったような気がする。

二人で愛し合っても
ヨシは僕を見ていないような。

キスをしても
ヨシは僕じゃない誰かと
キスをしているような。

きっと
あの時から僕じゃない誰かが
ヨシの心の中に
住んでしまったんだろうな。」
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