こんなにも愛しているのに〜それから
最終章

樹と茉里のそれから

俺はシンガポールの
眩しいほどに輝く
青い空を見上げている。

シンガポールに来て
3年が経とうとしている。
茉里と
距離と時間の隔たりを置いて
考えて
考えて
やっぱり
茉里と一緒に生きていきたい。
と俺は思う。

夫と妻として
これから
ちゃんと向き合い
思いあって過ごしていきたい。

昨年あたりから
ビデオ電話を交わすようになった。
ましろのすすめで。
まだ
一度もましろは画面に出てはくれないが
茉里はその落ち着いた風情のまま
パソコンの前で
俺にいろいろな表情を向けてくれる。

うれしいが
直に
茉里に触れられないのが
寂しい。

自分からはビデオ電話ができず
茉里からビデオ電話があるときにしか
話せない。
毎日でもしたいが
この電話で茉里の時間を奪ったら
煩がられないかと心配する。

あとは
いつものようにメールやメッセージのみだが
それでも
俺と顔を付き合わせて話してくれるように
なっただけ進歩だと思う
俺は単純だろうか。

ましろは大学受験を前にして
合格したら
家を出て一人暮らしをすると
言っているらしい。

お父さんをこの家に迎えてあげて。
と。
俺のことを許せないのかと
凹んだが
茉里が

’お父さんに帰って来て欲しいって
言っているのよ。’

ましろとはもっとゆっくりと
父と娘との仲を築き直さなくては
いけないのだろう。

俺は
あの家に
茉里とましろがいるあの家に帰りたい。
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