離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「おじさまの大事なクライアント企業っていうのもそうだけど、香織ちゃんも昔から千景のことが大好きだものね」
そこがまたネックである。
香織がまだ小学生のころから『将来は千景さんのお嫁さんになる』と公言し、千景の父親にも上手に取り入っていたのだ。かわいい娘の無邪気な夢に、彼女の父親も当然ながら快く了承。外堀から埋められているような状況だ。
「ともかく、千景の希望通りにいくのを祈ってるわ。なにかあったら遠慮なく相談してちょうだい。っと、噂をすればなんとやら」
美咲の視線がなにかを捕らえたように留まる。
千景がその目線を追ってみれば……。
「千景さーん」
香織が手を振り振り、こちらに向かって走ってくるではないか。パステルカラーのスカートをなびかせ、スキップでもしそうな勢いだ。
そんな様子を見て美咲がクスッと笑う。
「好かれるのも善し悪しね」
同情の色をにじませた目で千景を見てから、肩をトンと叩いた。激励でもするような触れ方だった。