離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「コーヒー淹れたから、こっちおいで」
手招きで百々花を呼び寄せると、素直に応じて足を動かす。
彼女の向かう先、ダイニングテーブルには用意された朝食が並んでいる。とはいっても千景が作ったのではなく、住んでいるマンションのサービスで近くのホテルから運んでもらったものだ。
千景は椅子を引いて百々花を座らせ、自分も向かいの席に腰を下ろした。
「それであの……」
「もしかして、昨夜のことを覚えてない?」
ゆっくりと口を開いた百々花に千景が意味深に問いかける。
「……はい、すみません」
千景のマンションへ来た記憶だけでなく、結婚の件まで記憶にないということか。さすがにそこは覚えているだろうと楽観視していたが。
「俺たち、結婚したんだけど」
はっきりと事実を伝えると、百々花は目を点にした。どこか別世界にでも旅に出たかのように、魂がここにないようにすら見える。