離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
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翌朝、百々花が目を覚ましたのは、千景がキッチンでコーヒーを淹れているときのことだった。
千景を見た百々花の目が、瞬間的に大きく見開かれる。いるとは思いもしない人間だったか。
「おはよう。目覚めはどう?」
「えっ、あ、はい、大丈夫で……すが、あの……」
声をかけると、百々花はビクッと肩を弾ませ目を白黒させる。
状況がまったくつかめないといったところか。やはり心配していたように覚えていないときたか。
「ここがどこだかわからないって顔だね」
「は、い……」
戸惑いがちに言葉が途切れる。
「ここは俺のマンション」
そう答えた途端、百々花はぽかんと口を開いて動きが止まった。予想外の事態を前にして思考回路まで停止したか。
その様がかわいらしくて、千景はつい笑みがこぼれる。