いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
攻防戦
日曜日はいつもより少し遅い時間に起きて、洗濯や掃除を済ませたあと、引っ越しの準備をして過ごした。

作業を進めていると、ときどき昨日のことを思い出し、ぼんやりして手が止まってしまう。

しばらく経つと我に返って再び手を動かし始めるけれど、またぼんやりして手が止まり、思うように作業がはかどらない。

まずいな……非常にまずい。

私の意思とは裏腹に、頭の中がどんどん安藤部長に占領されている。

こんなのまるで、恋する乙女のようだ。

自分でそう思っておきながら、「いや、結婚しただけで恋なんかしてないし!別に好きじゃないから!」と大きな独り言を放って、首を大きく横に振る。

今まで誰と付き合ってもこんな風になったことはなかったのに、イケメンの色気って恐ろしい。

毎日同じ部署で働くのに、変に意識して仕事中におかしな態度を取ってしまわないかが心配になってきた。

仕事とプライベートの切り替えだけはきっちりしておかないと。

平常心、平常心……。

妙な勘違いを起こしてはいけない。

あの人は社内の女子から熱い視線を集めるイケメンのエリート上司で、私は地味でなんの取り柄もないただの部下。

安藤部長が本気で私を好きになるわけなんてないんだから。


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