いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
なんとか平常心を取り戻して引っ越しの準備を進めているうちに、あっという間に時間は過ぎて部屋が薄暗くなり始めた。

引っ越しまでの数日の間にも使うもの以外はだいたい整理が済んだけれど、航太の荷物をどうするか、まだ決めかねている。

とりあえず段ボール箱に放り込んでまとめると、一箱では足りず二箱目もいっぱいになった。

思っていたよりその量が多いことで、航太と一緒に過ごした時間の長さに改めて気付く。

航太にとっては私と過ごした3年間なんて、ここに置き去りにされた荷物と同じくらいの価値しかないんだろうな。

なくても困らないから置き去りにしても平気なんだ。

私もきっと同じ扱いなんだと思う。

……まぁいいか。

私だって航太にはなんの未練もない。

引っ越しまではまだ一週間あるし、航太の荷物をどうするかはその間に決めよう。

それよりも今はスーパーに夕飯の材料を買いに行って、準備を始めることの方が大事だ。

洗面所で手を洗い、軽く化粧をして髪を束ね直した。

安藤部長は何時頃に来るだろう?

入れ違いにならないように連絡しておいた方がいいかな。

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