いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
考えるより感じろ
一夜明けて月曜日の朝。

ゆうべもまたろくに眠れずいつもより1時間近くも寝過ごしてしまった私は、朝食と弁当作りをあきらめ、あわてて身支度を整えて、いつも乗る電車より1本遅い電車に乗って出社した。

就業開始時間にはじゅうぶん間に合うけれど、いつもより遅い時間に会社に着くのは、なんとなく落ち着かない。

私がオフィスに入ると、安藤部長はパソコンの画面から視線を上げて珍しそうにこちらを見た。

私はとっさに目をそらして、すでに出社している同僚に挨拶をしながら自分のデスクに向かう。

その途中で小山くんからは旅行のお土産をいただき、その隣の席の牛島くんからも出張のお土産をいただいた。

二人にお礼を言って少し話したあと、両手にお土産のお菓子を持って自分のデスクにたどり着き、なんとか安藤部長と目を合わせずに済んだと胸を撫で下ろしながら席に着くと、誰かに肩を叩かれた。

振り向かなくてもそれが背の高い人だと気配でわかる。

「おはよう、小柴さん」

案の定、その人は安藤部長だった。

仕事とプライベートはきちんと分けなくてはいけないと思っていたのに、どうしても安藤部長の顔を見ることができない。

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