いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
だけど創さんの帰りを悠長に待っていられる状況ではないし、創さんの顔を見たら別れづらくなりそうだから、創さんが出張中で不在の今のうちに出ていこう。

そう決心して、自分の部屋で必要最低限の荷物をバッグに詰めているとき、会社から持ち帰った紙袋の上の方に封筒が入っていることに気付いた。

封筒の中には離婚届用紙が入っていた。

ご丁寧にこんなものまで用意してくれているあたり、社長はどうしても私と創さんを離婚させたかったのだなと改めて思う。

荷物をバッグに詰め終わったあと、私は涙を堪えながら離婚届に署名した。

始まりはお酒に酔った勢いだったから、婚姻届に署名したことも、それを提出したことも覚えていない。

なりゆきで始まった交際0日の『いきなり婚』は、最初のうちこそ戸惑ったけれど、いつの間にか創さんに惹かれ、創さんから愛され求められていることを知って、何物にも変えがたい幸せに変わっていた。

1年経っても好きになれなければ離婚して欲しいと言っていたのが嘘のようだ。

こんなに好きになったのに離婚しなきゃならないなんて、私はどうしてこうも幸せに見離されているんだろう?



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