キミに伝えたい愛がある。
結局、私が帰宅したのは8時過ぎだった。


映画は見る気にならず、隣町のショッピング施設のベンチに腰掛けて2時間やり過ごし、その後は終点まで電車に乗った後引き返してきた。


さすがに知らない町で降りて捜索願を出されたら大事になるだろうと思ったから止めた。



「ただいま、おばあちゃん」


「ちゆりちゃん、お帰り。ご飯は食べる?」


「うん...」


「ああ良かった。ばあちゃんもお腹空かなくてね、まだだったんだよ。一緒に食べよう」



祖母は私に何も聞いてこなかった。


それどころか私に色んな話をしてくれた。


私が幼い時のこと。


お料理のこと。


祖父との出会いなど。



「ちゆりちゃんがいてくれてばあちゃんは嬉しいよ。ありがとうね」


「私もおばあちゃんが居てくれて良かった。おばあちゃんがいなかったら私生きていけないから。これからもよろしくね」


「こちらこそ死ぬまでよろしく頼むよ」



おばあちゃんと2人きりで誕生日を過ごしたのは久しぶりだった。


去年まではめぐちゃんが居てくれたから。


でもこれからは一緒に居られることはなくなる。


私たちの関係はほどけたんだ。


糸を結び直したいと誰も思わないだろう。


さよなら、セブンティーン。


さよなら、りっくん、めぐちゃん。



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