副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
その夜、啓太さんからいつものように電話がかかってきた。

「今夜の美鈴は、本当に綺麗だった」

「そ、そんなことはありませんよ」

「いや。他の男に声をかけられるんじゃないかって、気が気じゃなかったんだから」

「も、もう。本当にそんなことありませんから。あの後、篠原さんに冷やかされて、恥ずかしかったんですよ」

「あはは。これで彼は大丈夫かな。僕の味方になってくれたと思う」

「敵も味方もありませんよ。篠原さんは、私の上司です。
それに、約束の間は、私も他の人に目を向けませんから。まあ、そもそも誰かに目を向ける気なんて、全くありませんが」

「それは安心だ。でも、向ける気が全くないっていうのは気になるな。どうして?」

「啓太さんと同じですよ。今は、仕事を頑張りたいんです。
それに、いずれは母の住む実家に帰るつもりなんです。なので、こっちで恋人を作っても、意味がないというか……別れる前提での付き合いになるようで、嫌なんです」


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