副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
レストランを出ると、いつの間にか辺りは暗くなっていた。
呼んでおいたタクシーに乗り込み、やどり木へ向かった。

「なんか、緊張します。バーなんて初めてなので」

啓太さんは、つないでいた手にぎゅっと力を込めると、

「大丈夫。僕が慣れてるから」

と、ウィンクしてみせた。
見慣れぬ言動に、思わず笑ってしまった。

「少しは緊張がほぐれたかな?」

話しているうちに、お店に到着した。



店内は、間接照明がとてもおしゃれで、落ち着いた雰囲気だった。
どの席からも見える位置に、グランドピアノが置かれている。

店員さんに案内されたのは、二人で並んで座るようなソファーが置かれた席だった。
隣り合って座るべき……だよね。

「なんか、この席は緊張しちゃいます」

「そう?ぼくは美鈴に近付けて、嬉しいけどね」

啓太さんの言葉に、ますます落ち着かなくなる。

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