副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「晴土もついに、年貢の納め時だなあ」

篠原さんの結婚報告を受けて、そう呟いた啓太さん。
もしかしたら、〝独身を謳歌する〟の内容は、私が思っていた以上だったのかも……と思ったけど、どうやらそうでもないらしい。

「晴土はあの雰囲気だから、なんとなく軽そうに見えるけど、結構一途だよ。二股なんて一切しないし、遊びもない。強いて言えば……相手が途切れることないんだよ」

「へ、へえ。そうだったんだ」

まあ、なんとなくわかる気はする。

ところで、気になるお相手は……なんと、同じくY.Sパートナーズで一緒に働いていた、経理の田中舞さんだった。
篠原さんは、あれほど社内の人間は恋愛対象外って言っていただけに、すごく驚いた。
まあ、外野にはわからない、何かがあったのだろう。

それにしても、田中さんは以前、結婚に憧れないなんて言ってたけど……
そのことを聞いてみたら、「好きになっちゃったんだから、仕方がない」と、なんとも田中さんらしく返された。





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