副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
翌週の水曜日。
篠原さんと一緒に、プラスoneの本社へ、篠原さんの運転する車で向かった。
本来なら、秘書の私が運転をするところなんだけど、私はペーパードライバーの上に、篠原さんは仕事であっても女性に運転させない主義だとかで、同行する際はいつも運転してもらってる。

「美鈴ちゃん。用意してくれた資料だけど、すごく見やすかった。まとめるのに、時間がかかったでしょ?」

「それなりに……」

「そういうきめ細かいことが、相手の信頼を勝ち取ることにつながっていくんだ。美鈴ちゃんの仕事ぶりはすごいよ。本気で、突然辞めたりしないでよ」

先日の話を、また掘り返す篠原さんに、失礼ながらも呆れた目を向けてしまう。

「ありませんよ。付き合ってる人もいないですから」

「それはそれで、もったいない気もするけど……」

今度は、思わずジロリと睨んでしまう。

「す、すみません」

運転中でも、視界の端に私の睨みを捉えたようだ。

「別にいいんですけど。クビにならないように頑張ります」

「クビだなんて……美鈴ちゃんがいなくなったら、うちはダメになるからさ」

本気とも冗談とも言えないような口調で言われ、真意は判断つきかねた。

「さあ、着いた」
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