副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
いつしか、喜怒哀楽を素直に表現する彼女を見かける発表会の日が、楽しみになっていた。


7歳の発表会では、少し難しい曲に挑戦していた。
見事に弾ききった後に見せた、満足げな表情は、清々しかった。


8歳になる頃には、すっかりお姉さんになっていた。
先生の手伝いで、入ったばかりの小さな子のお世話をしている姿を見かけた。
かと思えば、ロビーでは母親にあまえる姿もあった。


9歳の発表会では、さらに難しい曲に挑戦していた。
毎日、練習を頑張っていることが伝わる演奏だった。


たった年に一回見かけるだけの彼女のことなのに、自分の記憶にはしっかり残っていた。
今でも、その姿をはっきり思い出せるぐらい、少女の存在は大きかった。




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