三月はいなくなる子が多いから
職員室に寄ってから向かうと先生は言っていた。
廊下からVANSのスリッポン、少しだけカカトを床に擦る、
颯爽とした足音がする。

先生だ。

先生はすぐに来るとは言っていたけれど、
待っている私にはその時間はとても長かった。

身に覚えのない用事で緊張しているだろう私を気遣うように、
ドアは優しく開かれた。

「ほんとに悪いな、平野」
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