三月はいなくなる子が多いから
私の目の前まで来た先生を見上げる。

「そんな時間はかからない。
ちょっと今から生徒指導室に来てもらえないか?」

返事ができずにいる私に、

「何か大事な用事があったか?」

私はかぶりを振るのが精一杯だった。

「そりゃ、助かる。ってか平野、どうしたんだ? そんなに動揺して。
何か先生に言えないようなことしてるんじゃないだろうな?

私の動揺を和らげようとしているのだろう。
先生はいじわるそうな笑顔でそう言った。

「ばっ、そ、そんなことしていません!」

そのおかげかようやく声が出た。

「今からでも大丈夫です。
このまま指導室に向かっちゃっていいんですか?」


「おっ! 本当に助かるよ。
あぁ、悪いんだけれど指導室で待っててくれ。
職員室に寄ってから俺もすぐに行くから」


いつも一緒に帰るグループのみんなは心配してくれた。
大丈夫、私は悪いこともいいこともしてないもん。みんな先に帰っていいよ。

昇降口へと向かうみんな。指導室へと向かう私。


真反対の方向へと歩みを進めることとなった。
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