白い便箋を太陽に翳してみれば・・
「また花恵とここに来られるなんて想像もしてなかった・・」
「そうだね」
「前に花恵とここに来た時に言ったことなんだけどさ・・」
「俺・・海が好きなようで嫌い」

花恵が俺よりも先に口にしたんだ。

「あぁ。覚えていてくれたんだな。今はなんだかすげー好きかな・・。母さんが俺を捨てた海が憎くてどうしても許せなかった。だけど、考えてみれば母さんとの唯一の想い出の場所は、ここしかなかった。憎んでも憎みきれなかった母さんが、俺の誕生日に毎年メッセージ付きで何かしらプレゼントを贈ってくれてさ・・。そのことが、すっげー嬉しくてさ・・。俺も少しは愛されてたんだなーって。こんなこと言うのは恥ずかしいけどさ、俺・・母さんと父さんの子供に生まれてこれて幸せだったよ・・」

自然と、俺の目から絶え間なく涙が伝う。
前にここに来た時は、強がって素直に言えなかった。
だけど、今度は自分に正直になりたかった。
そしてそれを、花恵にちゃんと伝えたかった。

気づいたら俺の頬に伝ったものを、花恵が優しく拭ってくれた。
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