副社長の初めての相手は誰?
「私が見ているのは、外見ではありません」
「はぁ? 」
「その人のハートです」
「ハート? 」
「はい。どんなに外見が美しくても、ハートまで美しい人とは限りません。私は、その写真の女性にあった事はありませんが。優輝を通して感じていました。優輝は、ずっと母親を護って来た事から。なかなか人を本気で好きになることが、できなかったのです。でも、きっと彼女に会ったからでしょうね? だんだんと、今まで見せた事がないくらい笑うようになり、とても優しくなったのを感じました。その時と同じように、私は希歩さんに感じたのです。とても暖かいハートを。なので、この写真の女性に間違いないと私は確信しています」
小ばかにしていた目をした海斗が、スッと視線を落とした。
どこか辛い思い出でも思いだしたかのように、グッと押し黙っている海斗。
そんな海斗を見ると、父親として辛い思いをして来た事が優にも解った。
「秋田さん…。娘様の事、とっても愛していらっしゃるのですね」
そう言われると海斗は小さく笑った。
「不思議ですね。貴方は、娘を苦しめた憎い男の父親なの…全く憎めないなんて…」
ちょっとシレっとした顔で、海斗は優を見て小さいく笑った。
「息子様とのお話しは、娘に任せます」
え? …
驚いて希歩は海斗を見た。
「2人の事は、2人にしか分かりません。…たとえ親でも、口出しが出来ないと思いますので」
「そうですね、それが一番良いと思われます」
結局そうなるの?
希歩は困ってしまい俯いた…。
「とりあえず、春美さんの件に関してはお相手の方に、貴方の誠意を伝えします。それでも何かあるようでしたら、またご連絡させて頂きます」
「はい、わかりました」
「では、本日はこれで。後日また、息子様の件に関してはご連絡いたしますので」
「わかりました。では、この書類はどういたしましょうか? 」
海斗は俯いている希歩の腕を、そっと突いた。
ハッとして顔を上げる希歩。
「こちらの書類は、どうしますか? 」
「あ、はい。こちらでお預かりいたします」
そう言って、希歩はテーブルの上の書類をファイルに閉まった。
「本日はお時間を頂き、有難うございました。後日、またご連絡いたしますので」
「はい、またお待ちしております」
優しい笑みを向けてくれる優。
希歩はちょっとぎこちない笑みを浮かべた。