副社長の初めての相手は誰?
「絢の事は、母親である希歩さんにお返し致します。9年もの長い月日、知らなかったとは言え大切なお嬢様と一緒に居られた事に感謝しております」
「そうですか。まぁ、貴方達は何も知らなかったようですから。誘拐事件とは無関係ですからね。私も、何も責める事はしたくないと思っています」
「有難いお言葉に、感謝申し上げます」
「いいえ、こちらとしては。孫が無事に帰ってきてくれたなら、それで構いませんので。娘も
、これ以上はなにも望まないと言っていますから」
「はい…」
「こちらか、1つだけお願いがあるのですが…」
「なんでしょうか? 」
ゆっくりと海斗を見て、優は意を決した目を向けた。
「息子の優輝と、希歩さんとでちゃんと話をさせてもらえませんでしょうか? 」
「優輝さんと? 何故ですか? 」
「優輝はずっと、希歩さんを探していました。この10年ずっと」
「探していた? 希歩をですか? 」
「はい」
テーブルの上に置いてある、優輝と希歩が一緒に写っている写真に気づいて海斗は手に取った。
「もしかして、この写真が息子様ですか? 」
「はい」
「隣の女性は? 」
「息子がずっと探している女性です」
「この女性が、希歩だと言うのですか? 」
「はい、そうです」
海斗はチラッと希歩を見て、フッと鼻で笑った。
「全くの別人じゃないですか。娘の希歩とは、全然似ていない人ですよ。何を言われるのでしょうか? 」
優は小ばかにして笑う海斗を、じっと見つめている…。
じっと優に見つめられると、海斗はどことなく罪悪感を感じて、そっと目を反らした。