夜空に君という名のスピカを探して。
『楓、楓……!』


 うしろで誰かが私を呼ぶ。

目の前の闇とは反対に、背中から差し込む光。

そこから、聞き覚えのある声が聞こえた。

 私はこの声を知っている。

いつもなら静かな深海のように凪いでいるあの人の声が、今は荒れ狂う荒波のように必死に私の名前を呼んでいる。

 私はこのまま、お父さんとお母さんのもとへ行ってもいいのだろうかと、光と闇を交互に振り返る。


『楓……もう、会えないのか?』


 宙くん……。

やっぱり私、君になにも言わないままいなくなったら後悔する。

だから会いたい。もう一度だけ、宙くんに会いたい!

 そう強く願った瞬間、すべてを覆いつくすような光が私を包み込んだ。

この光が晴れた先に君がいることを祈りながら、私は強く目を瞑った。


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