夜空に君という名のスピカを探して。
「ヘタ言うな、幽霊のくせに」

『うるさいっ、根暗っ』

「俺の話し方のどこに、問題があるんだ」

『全部だよ! 皆の前ではちゃんと話せるのに、どうして風間くん相手だとそうなるかな』


 加賀見くんが私に対してぶっきらぼうな口調になるのも、ただ人との接し方が苦手だからなのかもしれない。

きっと、ただ不器用なだけなのだ。

 そう思うと、なぜかほっとけないと思ってしまう。


『えーと……。風間くんがうるさいんじゃないよって、伝えたらいいんじゃない?』

「……か、風間が……うるさいって、意味じゃない」


 素直に私の言葉を復唱する加賀見くんに、風間くんの表情がほぐれていくのが分かる。


「あぁ、そういうことか、分かりにくいって加賀見!」


 ニッと白い歯を見せて風間くんが笑うと、加賀見くんの身体からフッと力が抜けるのを感じた。

短く「悪い」と答えて、気恥ずかしそうに眼鏡の位置を人差し指で直す。

そんな加賀見くんをじっと見ていた風間くんは、笑いを堪えながら言う。


「いや別にいいって、でも意外だなぁ」

「意外?」

「加賀見って委員長だし、ハキハキしてっからさ」


 その“意外”は、もちろん加賀見くんの口下手さを指している。

それが加賀見くんにも分かったのか、怒ると思いきや苦笑いを浮かべた。


「誰かさんからすると、俺は根暗らしいからな。普通の会話はヘタらしい」

『ムッ、それは嫌味?』


 私が言ったことを根に持っているらしい。これでも恩人なのに仇で返すなんて、やっぱり加賀見くんは性格が悪い。


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