悔しいけど好き
「そういやお前こんな会社から近い所に住んでたんだな?知らなかった」

「…1年前に。通勤時間が勿体ないから…」

「え?そのために引っ越したのか?」

驚いたような顔をする神城に気まずくなってうんと頷いただけで黙々とご飯を食べる。

1年前まではここから電車で1時間ほどのワンルームマンションに住んでいたけど通勤時間が勿体ないからその時間も仕事に回したいと会社近くの物件を探していた。

それで見つけたここは見た目古いレンガ作りだけど部屋は可愛いタイルがキッチンやバスルームなど至るところに使われてて木の柱とかむき出しでどこかノスタルジックな雰囲気を醸し出してるのが気に入っている。
広めの1LDKでトイレバスルーム別。
それでいて家賃はそれほど高くなく、更に会社へは徒歩5分弱ときてる。
いい場所を見つけた!と即決で借りることにした。

「それでいつも誰よりも早く会社にいるのか…お前が仕事にのめり込んでいった頃と重なるな。完全なるワーカーホリックだな」

呆れるように吐き出す神城の言葉に小さく頷く。
自分でもわかってるつもり。
神城に勝つため昼も夜も仕事に打ち込みプライベートも犠牲にしてきたこの1年。

あ…皆が心配するほど打ち込み過ぎて、周りが見えていなかった?

「回りの忠告も聞かずに突っ走っていたらそのうち身体を壊すぞ。お前本当に少し休んだ方がいい」

私の体が心配だから私は営業を下されたのだろうか?
誰が心配?正木部長?
なわけないか…。
< 16 / 325 >

この作品をシェア

pagetop