悔しいけど好き
「1年半前に柳さんの手伝いしたことあっただろ?その時思ったんだよ。先陣切って先を行く営業より支える側のアシスタントの方がお前は合ってる。なあ、俺のアシスタントを受けてくれ」

1年半前、正木部長のアシスタントの柳美玖さんが質の悪い夏風邪にかかり2週間ほど休んでる間アシスタントを手伝ったことがある。
まだその頃営業先も少なくて手が空いてたのは私だけだった。
アシスタントの仕事も営業には欠かせない大事なことだから勉強になった。

その後、担当も増えてやる気と共に、追い詰められるように仕事にのめり込んでいった。
体調が悪くても無理を押して会社に来てたし毎日残業、家にまで持ち帰り、正木部長になにやってんだちゃんと休めと怒られたこともある。

神城の言葉と心配そうに眉根を寄せる表情にそれだけ私が気づかぬ内に心配も迷惑もかけてきたってことなのだろう。
なぜか申し訳ないような気がしてきてこくりと素直に頷いてしまった。

「よしっ!来週からこき使ってやるから覚悟しろよ!」

途端にガシッと首に腕が回りぐいぐいと首が締め付けられる。

「くっ苦しっ!離しなさいよ!大体こき使われたら休む暇もないじゃない!」

おおそうか!と嬉しそうに腕を解き今度はガシガシと頭を撫でまわされる。
破顔した神城を見てしまってドキンとまた胸が弾む。

だっ…だから何!?
この、ドキンって!!

「もう!いいからっ!さっさと食べて帰ってよ!!」

恥ずかしくなって腕を伸ばして思いっきり押し戻した。
にやりと笑う奴になんだか弱みを握られたような気がして気が気じゃない。
大嫌いな奴のアシスタントやめた方がいいかも…。
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