悔しいけど好き
話はそれだけだ、と、正木部長が立ち上がろうとしたときに私は呼び止めた。
「あの、正木部長が結婚を決めたきっかけって何ですか?」
「なんだ?人生相談か?神城にプロポーズでもされたか?」
「あっ!いえ…その、近いことは言われました」
ほぼ私にというより家族にだけど。
あの後本気だとは言ってたけど未だに信じられない。
私なんかでいいのかと思ってしまう。
「ふーんそうか。参考になるかどうか…」
案外驚く事もなく正木部長は座り直し顎に手を添え考え出す。
固唾を飲んで話し出すのを待っているとフムとひとつ頷いた正木部長がこちらを向いた。
「まあ、5年も付き合ってたら自然と結婚の話も出てくるからってのもあるが、二人でいるのが当たり前で心地が良かった。それに柳は俺には出来た彼女でな、逃したくないと思ったな」
「うわぁ…部長がのろけてる…」
「おい、茶化すなよ」
照れてるような苦笑いを浮かべる正木部長になんだか感動すら覚える。
こんな顔を美玖さんの前で見せてるのかと思うとキュンとくる。
「後は俺の中で柳が最後の女だと感じたからかな」
「最後の女…」
「この先長い人生いろんな出会いがあったとしても彼女意外いらないって思った、ってとこか」