悔しいけど好き
照れつつもそんなことをいう正木部長がいつにも増してかっこよく見えた。
ってか、かっこ良すぎる!
「お前しかいらない最後の女だ」って女子としては言われてみたい言葉だろう。
羨望の眼差しで見つめてると照れ隠しのようにもういいだろうと立ち上がりすたすたと出口に歩いていく。

「神城は、本気だと思うぞ」

「え?」

ドアノブを掴んだまま顔だけ振り向き部長は言った。

「神城はチャラそうに見えて案外真面目で一本筋の通った奴だからな。安心して奴に任せたらいい。仕事も、人生もな」

にっこり笑って部長は出ていった。
私は暫く動けずに噛み締める。

自分と鷹臣の人生
最後の女
結婚
仕事
本気
……

正木部長と美玖さんの幸せな話を聞いて余計に不安になるとかどうかしてる。

鷹臣のことは大好きだし一緒にいると幸せだけど私は鷹臣に相応しいのだろうか?
気が強くて、我が儘で、自分の事しか考えてなくて、すぐ周りが見えなくなるし、鷹臣が言ってくれるほど可愛くない。
こんなんじゃすぐに愛想尽かされてしまいそう。
私は鷹臣の最後の女になる自信がない。
怖じけづいてしまう自分にため息が出る。

それに仕事のことも自分で決断しなきゃいけない。
営業に戻るかアシスタントを続けるか。
仕事か恋かという選択肢もある。
美玖さんのように寿退社も憧れるけど私が専業主婦とか笑える。
想像した自分に嘲笑していっぱい考えなくちゃいけないことが多くて頭が混乱する。
このままじゃ埒が明かないと思考を振り切るように勢いよくお風呂から立ち上がった。
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