悔しいけど好き
……
「ああ、降りだしてきた」
外回りを終え社に戻る途中、空を見つめ頬に着いた雨を手で拭う。
ゴロゴロと唸りをあげる空にこれは激しく降るなと眉をひそめた。
足を早め雨が本降りになる前に社に戻り濡れずに済んだとホッとした。
エレベーターで課のある5階に着くと近くにある資料室の前で山本さんと美玖さんがなにやら深刻そうに話していた。
「え…どうする?」
「でもまた首を突っ込んで怒られてもなあ…」
「でも様子が変だよ?」
「お疲れでーす。何してるんですか二人とも?」
「え?神城!?」
「え!何で神城くんがここにいるの!?」
二人が俺を見て驚愕の声を上げる。
何でか知らないけど俺をお化けを見るような目で見る二人に失礼な!とムッとする。
「外回りから帰って来たところですけど?ここに居ちゃダメなんですか?」
「じゃあ…中にいるのは…」
唖然とした顔で山本さんが呟き何のことかと首を傾げる。
美玖さんが青い顔をして口元を押さえた。
「凪ちゃんが資料室から戻ってこなくて、ここに来たら誰かと話してる声がして…てっきり神城くんかと…」
「はあっ?」
俺はここにいる。
凪が誰かと話してるなら別の誰かだ。
その間にも微かに中から声が聞こえる。
意外と何を話してるのか外からじゃはっきり聞こえなかった。
でも、まさか……!
「柳が様子が変だと言うから開けようかどうしようか迷ってたと…ってっ!おいっ!」
「凪っ!」
焦燥に駆られた俺は迷わず蹴破るようにドアを開けた。