悔しいけど好き
……………
………
……

「ごめんね、凪ちゃんを一人にしなければよかった…」

「油断した私が悪いんです。誰も悪くありません。美玖さん顔を上げて下さい」

私の家まで送ってくれた美玖さんは玄関先で申し訳なさそうに頭を下げるので肩に触れ泣き晴らした顔でにっこりと笑って返した。
首を横に振る美玖さんは心配げに私を見つめる。

「……一人で大丈夫?」

「大丈夫です、すいません美玖さん。まだ仕事があるのに…」

「そんな事気にしないで。……後で神城くんが来ると思うから」

「鷹臣には…当分来ないでと言って下さい。暫く一人になりたいんで」

「凪ちゃん…」

「……鷹臣はこれからどうなるんでしょう?」

「わからないわ。正木部長が掛け合ってくれると思うけど…」

「そうですか…」

それだけ聞くと心配する美玖さんを送り出し、部屋に入ると力尽きたように座り込み項垂れた。



あの時……、

袴田専務の息が耳をかすめ胸を触られ恐ろしくて震え上がっていたとき雷鳴と共に鷹臣が飛び込んできた。

「凪っ!っ…、てめえっ!俺の女に触んじゃねえっ!」

逆上した鷹臣は私に覆い被さる袴田専務を引き剥がした。
ドゴッと鈍い音が響き、周りの資料と共に派手に倒れこんだ袴田専務と前に立ちはだかった鷹臣の背中を見て私はズルズルとしゃがみこんだ。

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