悔しいけど好き
「…あ、うどん食おうぜ」

慌てて鷹臣は視線を逸らし箸を差し出してきて、私がそれを受け取ると鷹臣は自分のどんぶりを持ち上げ豪快にすすった。
私も小さくため息を付くとうどんを一本頬張った。

「美味しい…」

「美味いか？おかわりもあるからたくさん食えよ」

「うん…」

今日は卵も入った月見うどんで優しい卵の味と香る出汁が食欲をそそった。

私は一杯ですぐにお腹がいっぱいになったけど鷹臣はおかわりをし、食べ終わると私にカモミールティを入れてくれた。
気分を落ち着かせてくれるりんごに似たカモミールの香りが心の底からほっとさせてくれる。
時計を見れは10時を過ぎていて、昼過ぎにここに帰って眠りについたころを考えるとだいぶ寝ていたことになる。

「凪、今日はほんとに…悪かったな…」

私の横に座り目を伏せながら言う鷹臣に首を横に振った。
眠ったおかげで気持ちも落ち着き今は何が起こったのか冷静に受け止められる。

「私が悪いんだよ、鷹臣は何も悪くない」

「俺が全部悪いんだ！凪は被害者なんだぞ！」

私の肩をがっしり掴んで唸るように言う鷹臣に反射的にびくりと肩を震わす。

「あ…悪い…」

ハッとした鷹臣は手を離し膝に肘を乗せ頭を掻きむしる。

「凪は何も悪くない。悪いのは凪を傷つけた袴田専務と俺だ」



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