悔しいけど好き
「ああそれと、ここ、防犯カメラ付いてるからな、過ぎた行動は慎むように」

「は!そうだった!」

すっかり忘れていた!

天井を見れば片隅で片時も見逃すまいと俺たちを見ているカメラと目が合った。
と、言うことはさっきのキスシーンもバッチリ映ってたということだ。

「う、ヤダ恥ずかしい…」

俺の腕に額をこすり付け凪は顔を真っ赤にしていた。
正木部長は大いに笑いバシバシと俺の肩を叩く。痛いんだが…。

「はっはっはっ、まあ他に問題なきゃスルーされるから心配すんな」

「あ、でも、美玖さんも正木部長と一度だけここでキスしたことがあるって聞きました」

「えっ!?」

凪の突然の爆弾発言に驚き、正木部長も固まっていた。
そういや最近美玖さんと凪は会うとコイバナに花を咲かせていると言っていた。

「い、いや、まあ…そんなこともあったかな?(美玖の奴め)」

気まずくなった正木部長はつーっと視線を斜め下に下げて小さく美玖さんに悪態ついてた。
会社ではおくびもプライベートを出さず5年も付き合ってた正木部長と美玖さん。
そんな二人もオフィスラブ的なことはしてたんだな。
堅物で、スマートな正木部長もただの男だったという訳だ。

「へえ…それは面白い事を聞いた」

「…神城、なんか企んでないか?」

「いいえ、なにも」

別に脅して俺のいい様にしてもらおうなんてこれっぽっちも考えていません。これっぽっちも。
訝しげに見てくる正木部長に笑ってみせると部長はますます渋い顔になってた。

就業開始のチャイムが鳴り、正木部長はほら行くぞ!とそそくさと資料室を後にした。
俺たちは自然と手を繋ぎクスリと笑い合う。
出ようと戸口を見ればまだ元村次長が立っていた。
繋いだ手を見てため息を付くように言葉を洩らした。

「なんか見せつけられるとやっぱり堪えるね。可愛いなと思ってたんだけどな」

「え?」

困惑する凪に色気ある流し目を送る元村次長。

ちょっと待たんか―いっ!
やっぱあんも凪を狙ってたんかっ!!
憤然と凪の前に立ち俺よりまだ上にある目線に睨み返した。

「凪は俺のなんで、手出ししたら承知しませんよ?」

「ふっ…分かってるよ。でもその代り仕事では勝つつもりだから」

ふふっと不敵に笑って元村次長はさっさと行ってしまった。
くそっ、色気と背丈だけは負けてやるが、仕事と凪だけは負けてやんねえ!

「行くぞ」

見守ってた凪を引っ張り手を繋いだままオフィスへ戻る。

「ふふっ、頑張れ鷹臣。応援してる」

「勿論だ!ぜったいまけねえ!」

嬉しそうにクスクス笑う凪に拳を握り誓いを立てて俄然やる気が増してきた!


凪も仕事も絶対守ってやるからな~~!

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